夜は漆黒の闇に包まれる山のまち東栄
澄んだ空気の先に広がる満天の星もまちの宝
都会暮らしでは体験できない本物の暗さがここにはある
季節や天気、時間、月光の影響などもありますが、星がきれいに見える場所の条件としては「空気が澄んでいること」と「暗いこと」が大事。空気が澄んだ状態というのは、交通量が少なく排気ガスが少ないこと、塵などの不純物が少ないこと、海が遠く空気中の水蒸気が少ないこと、また標高が高いといった条件が要求されます。そして暗い状態というのは、人工の明かりが多い街から離れていること、外灯や自動車などの明かりが少ないことといった、つまり田舎地域が最適です。都会の方が東栄町で夜を過ごすと、都会ではいくら電気を消しても経験できない「本当の夜の暗さ」に出会い、「真っ暗で怖い!」とさえ感じるのではないでしょうか。(ちなみにこの暗さ、ぐっすりと深い眠りも得られますので、頭が疲れている方や普段よく寝られない方にもおすすめしたいです。)
東栄町を含む愛知県山間部にはこうした条件を満たす星空観測スポットがいくつかあり、奥三河は「星空の聖地」としてもアピールしているほど。肉眼でも、1~6等星まで見られ、まさに満天の星が楽しめます。
御園で星空観測の活動や教育が始められたのは50年以上前
以降、星愛に溢れる人々で繋がれてきた御園の天文学習
東栄町には、まち最北部の御園地区にある町運営の星空観測施設「スターフォーレスト御園」があります。
この御園地区に最初に天文観測施設を立ち上げたのは、50年以上昔に豊橋にて私設天文台「豊橋向山天文台」を営んでいた金子功さん。経済発展とともに都市化が進み明るさが増していく豊橋では天文観測の限界を感じ、金子さんは場所を移転することを決意。移転先を探していた際に東栄町から話を持ちかけられ、自前の機材を運び入れて天文施設を立ち上げ、1974年ごろより御園小学校旧校舎を利用した「御園天文科学センター」を始動。30cm反射望遠鏡や、自ら設計考案した金子式プラネタリウムを収める7メートルのドームを併設した施設で多くの天文ファンを集め、奥三河のみならず日本の天文ブームに貢献しました。後には、天文学習に限定せず、地域に根ざした地域おこし的な文化活動も視野に入れ、「御園高原自然学習村」を開設しています。御園に天文観測の活動基盤を作った金子さんの熱のある活動を経て、御園天文科学センター廃止後、1994年新たに「東栄町森林体験交流センター スターフォーレスト御園」が開設されました。開設に伴い、金子さんの知識と技術、そして想いを引き継いだ清水哲也さんが天文担当として東栄町役場に就職。以降四半世紀以上に渡り、清水さんもまたアマチュア天文家や学生グループ、星空観測に興味を持って訪れる人々に東栄の星空を伝えてきました。現在さらに、学生時代から天文部で活動し、御園でも清水さんからも多くを学び、東栄町が星空に強いまちであることから東栄町役場に就職したという生粋の星マニアである神谷純平さんがスターフォーレスト御園の担当職員をしています。こうした専門知識や技術を備えた職員が常駐し、学習をサポートする環境があるのも東栄町の星空観測の強みと誇りとなっています。
「泊まれる天文台」だからこそ存分に叶う星活
スターフォーレスト御園を訪れる人は、アマチュア天文家から高校・大学天文部の合宿、写真が趣味で星撮影に来る人、子どもと一緒に星空を楽しむ家族連れ、ゆっくり星を見ながらひとりで過ごしたい人、、と客層もさまざま。「星が見たい」という共通の目的のもと、マナーとルールにさえ従って過ごしていただければきっと素晴らしい体験をしていただけます。リピーターのハイアマチュアから初めて訪れる家族連れまで満足してもらえるよう、幅広い対応がされています。
スターフォーレスト御園は、17時以降は宿泊者のみが利用できる言わば「泊まれる天文台」。泊まって利用することで、時間を気にせず、夜中や朝方でも目的の星を見ることができます。流星群の時期は、外の芝生に寝っ転がって好きなだけ夜空を眺めていても。
星空撮影したい人は、真っ暗な場所に出かける危険や知らない土地だと怪しまれる心配もあるのではないでしょうか。そんな悩みもここでは無用、安心して撮影ができ、さらにスマホから一眼レフまで撮影の方法のみでなくパソコンの加工処理まで教わることができます。
万一雨に降られて星が見えない場合は、プラネタリウムで学習したり、本で勉強したりして過ごしてはいかがでしょうか。
ただしくれぐれも、ここは星を見たい人が利用する場ですので、明かりや照明に関して場所ごとに設けられたルールに従う必要があります。「明かり」の扱いに関する職員の説明も聞けますので、「明かり」の性質を理解しながら周りの人の観測の妨げにならないよう、過ごしてください。
オーダーメイド感覚のプラネタリウムと個々に合わせた星空解説が魅力!
スターフォーレスト御園はひとりから宿泊申し込みできる、小規模な施設。
山間地域の小さな施設ゆえ、利用者ひとりひとりに付き添い、ていねいに教えることが可能です。特に、今は大変珍しい手動式プラネタリウムでは、ハロゲンライトの手動スライドプロジェクターに御園で撮ったフィルム画像を使って本日の空を説明してくれます。台本はなく、その時期の空について子どもなど客層に合わせた内容で進行。夜実際に外に出て星空がわかるように、星の見つけ方、星座の探し方などを解説してくれます。プラネタリウムは、宿泊者ではなくとも、昼間のプラネタリウムプログラムのみに参加することが可能です。
また、6.5mのドーム天文台に収められたアスコ製60cm反射望遠鏡を使って、宿泊者を対象とした観望会も開催されます。東海三県では名古屋市科学館の65cmに次ぐ2番目に大きい反射望遠鏡ですが、空の暗さは東栄町の方が暗いので、もしかしたらこちらの方がよく見えるかもしれません。そのほか様々なタイプの望遠鏡も使い方から説明を受けながら、使用することができます。
地域の人々の協力に支えられた自然学習体験。マナーはしっかり守りましょう!
スターフォーレスト御園は、自然学習を目的として運営されている教育施設です。せっかく遠方から来ていただき泊まりで過ごしていただくことから、バンガローやBBQ設備なども整備されていますが、目的はあくまで星空観測。騒いだり、焚き火や花火などキャンプとしての利用はできません。
御園の天文台は過去に、本州で一番星空がきれに見える場所の認定をもらったこともあるほど。まちでは少しでも美しい星空を楽しんでもらえるよう、まちの外灯を工夫し継続的に「光害」の問題に取り組むなどしています。
東栄町はほかの山間地域と同様、高齢過疎化が進む田舎地域です。都会の方にはなかなか田舎地域がどうやって廻っているのか想像しづらいかと思うのですが、施設の掃除や食事の手配、さらには土地の草刈りや山や道の手入れなど、田舎できれいな星が楽しめる環境は、地域の人々による快い協力や職員の日頃の努力の上に成り立っています。そんなこともどこかで少しだけ思い浮かべてもらえると、みなさんをまちに受け入れる町民の私たちもさらにやりがいを感じ、東栄をいつまでも美しい星空観測ができるまちとして自然環境保全に努める気力の源ともなります。
宿泊、設備、料金等の詳細は以下のリンクからご確認ください。
スターフォーレスト御園
住所:愛知県北設楽郡東栄町大字御園字野地91-1
電話:0536-76-0687(9:00〜17:00)
宿泊施設:本館和室(定員6名3室)、洋室(定員8名1室)/大人3210円、小人2140円食事:朝食730円、昼食770円、夕食1150円
チェックイン: 15−17時、チェックアウト:9−12時(夜遅くまで星を見て朝ゆっくり寝られるようチェックアウトは遅めです)
予約受付:予約は6ヶ月前から一週間前まで受付。天候により、前日午前中までキャンセル可。
運営日:土曜日、連休の中日、春休み・夏休み・冬休み
プラネタリウム(330円):昼間投影(整備等による休影もあるため要事前確認)土・日・祝日14:00〜、夜間投影(宿泊者のみ)19:00〜
注意:
17時以降は予約なしでは来場することはできません。(駐車場への停車もお断りしています。夜間は施設で車のライト等点灯されないよう、くれぐれもお気をつけください。)マナーとルールを守り、美しい星空を楽しみましょう。